前回JAL再建の例を取って、企業哲学(JALフィロソフィー)がどれだけ業績に影響を与えたかについて記しました。
今回は、企業哲学はあるものの惜しい例を自分が最近経験した実例を用いて考えてみたいと思います。
私は最近「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という病気になり、この3週間ほど病院へ通っています。
その病院は総合病院で開設45年、病床数は48床、職員数が254名、駐車場には34台のスペースがあり、その他に介護施設を7ヶ所運営している地方では大きな医療法人です。
しかも何年か前に経営が立ち行かなくなった「NTT長野病院」買い取った上で、退職者以外の職員は全員継続雇用した実績を持ちます。
正に、地域に密着した貢献を目指す医療の在り方を提供していると感じます。
私がこの法人の理事からお聴きした限りでは、厚生労働省からは一切助成金を貰っておらず、何年も連続で表彰されている自立経営を実現した医療法人です。
特に介護施設で助成金を貰っていない点は素晴らしいのひと言です。
その病院へ3週間通って(現在進行形)感じたこと。。。
医療設備や院内の清潔感は整っています。受付のスタッフさんや看護師さんのサービス態度も通い続けると親切です。
“この通い続けると”というのがひとつのポイントになります。
つまり、圧倒的に顔馴染みの患者さんが多いということです。
逆に言うと、初診の患者さんにはあまり親切な感じがしない場合があるということですね。
私の場合もそうでした。
当初は激痛に悩まされていたため病院での自分の顔はきっと怖かったと思いますが、馴染みのない患者であった私には言葉や態度が事務的に映りました。
一方で、初対面でも優しい言葉を投げかけてくれる看護師さんもいました。
つまり、スタッフさんによってバラつきがあるのです。
なぜこのようなことが起こるのか?
これは、経営理念の内容と共有化に課題が隠されているのではないかと、個人的には感じました。
この病院の経営理念は
「私たちは、診療・予防医学、福祉サービスを通じて質の高い医療と良質なサービスを提供します」
基本方針は
1.医療安全を最優先として、診療記録の開示も含め、透明性の高い医療を提供します。
2.地域の医療・福祉の向上に寄与いたします。
3.日々の研鑽と改善を心がけると共に、可能な限り最新の医療設備をもって良質な医療を目指します。
如何でしょうか。立派な言葉ですが、何か気づかれたことはありませんか?
そうです。人のこと、院内のスタッフさんに向けた文言がないのです。
確かに質の高い医療を提供しているかも知れません。良質なサービスを心がけているかも知れません。地域の医療・福祉には役立っているでしょう。最新の医療設備も整っているようです。
しかしスタッフさんたちは、なぜそれが必要なのか?、それを実現することによって自分たちには何がもたらされるのか?そもそもこの経営理念や基本方針を実施する目的は?意義は?得たい結果は?ということを突き合わせていないのではないでしょうか。
ここがスタッフさんで共有できていないと、初診の患者さんに対する言葉や態度、スタッフさん毎のバラつきに表れてしまう気がします。
もし朝礼等でこれらを読み上げているだけだとしたら、効果はありませんよね。
惜しい!実に惜しい!
私の印象では、スタッフさんそれぞれに結構個性があるのですがそれが抑制されているようで、その個性を引き出すともっと組織が活性化する予感がしています。
この内容と離れてしまいますが、顧客側の視点で気づいたことがあります。
それは、自分が気持ちよくその場を過ごすためにはサービスを受ける側>サービスを提供する側といった顧客優先主義を排除することです。
サービスを受ける側がサービスを提供する側に配慮した言動を心がけると、相手の心が開きよりよいサービスを受けることができます。
たぶん、このようなことは皆さんには“釈迦に説法”かも知れません。
しかし、これは取引先や協力業者といったパートナーに対しても同じことが言えます。
自社の利益優先のためにコストダウンを進める、無理な納期を押し付けるなど、まさしくサービスを受ける側が上の立場である証拠を突きつけているようなものです。
人間にしか与えられていない4つの能力の一つである“良心”に従って生きたいものです。
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