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  • 執筆者の写真竹内 明仁

「年輪経営に会社経営の王道をみる」

先日、伊那食品工業の塚越寛会長の講演を拝聴する機会を得ました。

社外での講演は殆どされていないので、大変貴重な機会と言えます。

私は過去に3度会長のお話をお聴きしていますが、今回の内容も、「会社とはどう在るべきか」を考える場となり、お話をお聴きする度に心に深く刻まれていきます。


塚越会長といえば、トヨタ自動車の豊田章男社長が師匠的な存在として認める方です。

グループ企業併せて約37万人の従業員数を誇るトヨタのトップが、約500人の会社のトップに教えを乞ゔ…驚嘆すべき事実ですね。


その塚越会長が唱える経営の真髄は"年輪経営”

『急激な成長をよしとせず、売上や利益の追求を目的化しない。経営の目的は社員を幸せにすることであり、売上や利益は健全な経営の結果である』が根底にあります。

『社内に"景気”という言葉がなく、会議で売上や利益について議論することもない。会社が永続するためには末広がりに少しずつ成長すればいい』


経済界の価値観は、「どんどん成長することがいいこと」であり、それとは真逆の考え方です。

特に『大企業の場合、経営トップが定期的に入れ替わることから、その時のトップの自己顕示欲として売上や利益の拡大を求めることになり、上場している以上株主への還元という意味からノルマになる。ノルマは社員を疲弊させる。だから上場しない』と言い切ります。

この年輪経営の考え方が豊田社長に強烈なインパクトを与えたようです。


塚越会長はご自身の辛い闘病生活の経験から、社員の健康を第一に考えています。

昼夜交代制勤務はしない、社員全員が"がん保険”に加入するなど、様々な施策を講じています。


『社員が退職する時に“いい人生だったな”と思って貰えること』を目指し、『人間の全ての営みは人の幸せに繋がる』と仰っています。

また、『経営者は教育者であるべき』との信念があり、毎年新入社員に百年カレンダーを見せて自分の命日を知って貰うことから逆算して「自分はどう在りたいのか」を問うこともされています。


塚越会長が定義する“いい会社”とは、『全ての人が"あの会社はいい会社だね』って自然に言って貰えること。“優秀な人”とは、優しさに秀でた人=思いやりに満ちた人。


そのために伊那食品工業さんが行っている行動を幾つか挙げてみます。

・社員が出勤時に会社へ入るため右折しなければならない場合、渋滞を避けるために社員は遠回りをして左折して入る。

・社員がスーパーマーケット等へ買物に行った時、子供やお年寄りに配慮し、入口から最も遠い位置に駐車する。

・会社の社員駐車場では、自然に配慮して前向き駐車とし、車のお尻をピタッと揃える。

・仕事をする前に、3万坪程ある広大な会社敷地内を外注業者に頼らず社員だけで掃除する。

・トイレの掃除も行き届いており、男性トイレの便器の上には「このトイレはキレイに掃除が出来ています。便器は汚い物ではありません。ズボンがつくまで前に出てはいかがでしょうか?」のプレートが掲げてある。

・雨が降った時のために置き傘が各所に設置してあり、施設内のどこに傘を置いても不思議と元の傘置き場に戻っている。

・敷地の周りには柵がなく警備員なども不在のため、24時間開放状態にあり、敷地内にある地下水をいつでも誰でも無料で持ち帰れる。

そして何と言っても、施設内を散策していると社員が気持ちのいい挨拶をしてくれる。



如何でしょうか。

上記の内殆どが、自然と会社と施設が一体化した「かんてんパパガーデン」で体験することができます。


社員が「月曜日に会社に行くのが待ち遠しい」「尊敬する人は自分の上司です」という会社。昨年は新卒20名の採用枠に対して1,000名程が受験した会社。

伊那食品工業さんは、世の中の"人手不足”とも無縁の会社です。






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