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  • 執筆者の写真竹内 明仁

「財務面の無駄を省く」

会社の中・長期的な施策を実現するためには、足元の財務基盤を整えておかなければなりません。今回はその辺りに触れてみますね。


会社は仮に債務超過に陥ったとしても、それだけでは倒産しません。

会社が倒産する時は、支払うおカネがなくなり金融機関から見放された時が一般的です。

そう考えた場合、社員さんの自己成長を支援したり、取引先と強固なパートナーシップを築いたり、顧客満足度を追求しながらも財務面での無駄を省いていくことも同時進行させる意義が出て来ると思います。


では、「財務面での無駄とは何でしょうか?」

その前に、よく分からないという理由で自社の財務を会計事務所に丸投げしていないでしょうか。あるいは、自社の財務に関して次に繋がるような具体的な改善事例を、会計事務所から積極的に受けているでしょうか。それも一年に一度の決算時だけではなく、経営計画を一緒に考え、実践面で毎月のモニタリングとそれに伴うフィードバックを共有する関係になっているでしょうか。「財務面の伴走者はいますか?」


もしこの辺りの関係性がないとしたら、家計で言う自分の財産と収入の状況を知らないことになり、今後どのようなライフプランニングを描いていったらいいのかが判断できないことと同じですね。

士業の立場から見れば、近い将来かなりの数が淘汰されていく所以でもあります。


財務の無駄を省くためには、先ず自社の本当の姿を知るところから始まります。

つまり、財務諸表の中の貸借対照表(B/S)の帳簿上の金額と実際の評価額が合っているかどうか、実態に基づいて見直すことです。


例えば、土地を所有している場合、その土地の簿価と時価にズレがないかどうか、投資用に購入した有価証券の簿価と時価のギャップはどうかなどの差異を認識し、これらの資産は現在から未来に渡って有効活用できるものかどうかを判断することになります。

同時に、機械・器具の固定資産評価額も見直しをしたい部分です。


もし有効活用の目途が立たないのなら売却し資産のスリム化をお勧めしますが、ここで難しい問題は、土地のようにご先祖様代々のものを処分することに対する抵抗感です。

ここが、ある意味で経営者の意思決定が試される場面です。


在庫を持つ業種の場合には、その在庫が実態に照らして帳簿価額通りなのか精査することも重要です。当初の評価額では売れないものや全く売れそうもない、いわゆるデッドストックがあるかどうか。あった場合は何らかの形で処分をし、その評価損を計上することで実態に即したものになります。

売掛金の中に長期的に回収できていない、または全く回収不能のものはないかどうかを調査する必要もあります。帳簿上は回収可能性がなくても資産として計上されているため、実態とは合いません。

未収金・仮払金・貸付金もくせものです。意外に直接ビジネスと関係ないところへの出金となっていることがあります。これも回収可能性を判断した上で、資産のマイナス対象になるかも知れません。


このように、帳簿価額ではなく時価に評価替えした実態に即したB/Sを作り直すことが、ごまかさない透明な経営の第一歩ではないでしょうか。


実態B/Sに直すと資産の部分が減少し、場合によっては債務超過に陥る可能性がありますので、金融機関へ提出する資料としては有利に働かないでしょう。

しかし、現状を見過ごすと、更に苦しくなった場合、売掛金や在庫の水増しなどの“粉飾決算”へ走る前兆になってしまうかも知れません。


次に、損益計算書(P/L)の無駄について目を向けてみましょう。

販売費・一般管理費の中にある「保険料」という勘定科目があります。

これはB/S上の保険積立金と同様に、見落としやすい盲点だと考えています。

理由は、節税目的での加入や、その会社にとって必要なリスクヘッジから来る適切な保険金額ではないことの方が多いからです。

しかも長期的に支払うか、短期的に高額になるかの違いはありますが、その金額は経営を圧迫する可能性もあります。難しい融通しか利かない上に、早期解約をすると損失が多々出ます。

節税を重視すると内部留保が増えないため、設備投資や想定外の事態の時に金融機関からの借入に依存することになり、これが後々重くのしかかって来る結果、負のスパイラルに陥ることもあります。

財務内容によっては、例え借入ができたとしても「財務制限条項(コベナンツ)」という、2期連続の経常利益の赤字や前期より純資産が75%未満になった場合は、一括返済を求めるなんて物騒な契約が中小企業まで降りてきているとも言われているので、いくら金利が低いと言っても注意が必要です。


販売費・一般管理費という固定費は、人件費・経費・金利などの「経常固定費」と、教育・研究開発・広告・IT化などの「戦略固定費」に分けて考えるのが戦略的財務の一面です。

単に固定費を削減するのではなく、本当に必要な項目と重要ではない項目の選択と集中が求められる訳です。


今回のコラムをひと言で表すと、「経営を透明化することから財務の体質改善が始まる」になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!




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