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  • 執筆者の写真竹内 明仁

「同一労働同一賃金の正体とは?」

来年度の4月から始まる働き方改革関連法のひとつ『同一労働同一賃金』

要するに、「同じ仕事(職務)であれば正社員と非正規社員(有期雇用・パートタイマー)の区分だけで待遇に格差をつけてはいけませんよ」ということが法制化される仕組みです。


~職務給と職能給の判断基準の違い~

職務給とは、仕事(職務)の価値に対して賃金を決める方法なのに対し、職能給の方は職務遂行能力を基準に賃金を決める方式です。

これだけではよく分からないですよね。


職務給は、会社が必要とする仕事(職務)の内容・難易度・責任の度合いを分類し、それぞれの仕事(職務)の価値を評価し、賃金に反映させる制度なので、成果主義・同一労働同一賃金を原則としています。

「この仕事に対してはこれだけ払います」といった“仕事”を判断軸にします。


一方職能給は、社員の知識や経験、技能や資格などの職務に必要な能力や、リーダーシップ・協調性・ストレス耐性などの潜在能力を評価して賃金を決めることになります。

これらの能力は幅広い仕事を経験させることにより向上していくと定義されているため、勤続年数に応じて区分・序列化されます。

つまり、同一能力同一賃金ということになり、年功序列・終身雇用を前提とした制度といえます。

「この位の経験があるからこれだけ払います」といった“人”を判断軸にする点が違います。


「職務内容の貢献度を重視する」か「職務遂行能力を重視するか」


~他国での『同一労働同一賃金』の実態は?~

欧州では職務給である『同一労働同一賃金』が普通です。国によってバラつきがありますが、ドイツやフランス、イタリアでは同じ仕事であれば正規・非正規に関係なく賃金が同じであり、その職種の最低賃金も保証されているようです。


それは、この制度が機能している理由があるからです。

それは、産業別労働組合の存在です。

職種によって会社単体とは関係なく業界全体に横断的に繋がった労働組合があり、その労働組合と働き手の職種が属する業界団体が交渉して賃金が決定されているのです。

その結果、会社の規模や正規・非正規に関係なく職種が同じであれば、同一賃金が実現していることになります。


但し、職種によって賃金が決まっているということは自分の職種に専念することになり、大変そうだからといって他の職種を手伝うと越権行為になりますので、組織の横の繋がりはないと考えてよさそうです。


~日本の正規・非正規社員の実態~

日本では固有の年功序列・終身雇用といった働き方が崩れて来ている中で雇用形態が大きく変わり、今では非正規社員(有期雇用者・パートタイマー・派遣社員)が4割を占めるまでになりました。

そして、正規社員と非正規社員との待遇格差が拡大し、パートタイマーの賃金水準に至っては正規社員の4割も低い結果となっています。

30代半ば以降の女性は結婚・子育てなどの関係で自ら非正規雇用を選択している人が多いわけですが、個人的には育児休業取得に対する周りの理解や制度の活用が十分でないこと(特に中小企業)と、「配偶者控除・配偶者特別控除」の存在が阻害しているのではないかと捉えています。

「一億総活躍社会の実現」の名のもとに待遇格差の状況を早期に打開するために、国は『同一労働同一賃金』の実施に踏み切ったという事情があります。


~日本で『同一労働同一賃金』は馴染むのか?~

日本で定着するには大きな障害が2つあるように思われます。

1つは職務給を実施するための事前準備体制が整っていない点が挙げられます。

欧州と違って、職業訓練校の整備が十分になされていないため、入社前に職種を限定して即戦力として仕事に就くことが難しい背景があります。

2つ目は、日本の労働組合は世界にも類を見ない「企業別労働組合」のため、職種に対して賃金等の“共通規則を決める団体”がないことです。

つまり、会社側が勝手に賃金を決めることを防ぐ抑止力が存在しない。。。

従って、『同一労働同一賃金』が規定通りに実施されているかどうかチェック機能が働かないことになります。

そうすると、労働組合がない中小企業がほとんどですので、連合などの「地域別労働組合」の果たす役割がクローズアップされて来ます。


他に、企業単体の活動からスタートし、この職種による賃金決定制度『同一労働同一賃金』を広めていくヒントが、ある企業の取り組みにあります。

それはまた次回。。。



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